100円の大根

皆さん、こんにちは!

朝晩、一段と寒くなって来た感があります。

本社工場前の二上山では紅葉が始まろうとしています。

朝晩は少し暖房が必要な時期になって来ましたね。

皆様方におかれましては、どうかお身体をご自愛下さいませ。

今日は先日あった心温まるエピソードをお話しさせて頂きます。

それは昨年の東北大震災の復興支援に対するものです。

先般、当社の永年のお客様で、尊敬する社長から、私宛に荷物が届きました。

「お歳暮の時期にはまだ早いし…何かな?」と思って、荷物をほどいた所、沢山の海の幸が入っていて、手紙が添えらていました。

それは、「……プロジェクト“一”のはじまり……」という挨拶文でした。(一は、はじめと読みます)

その内容は、このプロジェクトを考えられた人からの思いでした。

一端をご紹介します。

このプロジェクトを考えられた人を仮にFさんとさせて頂きます。

そのFさんの親友に岩手県宮古市で、いくつかの事業をおこし、自治活動やボランティアを熱心にされ、宮古の人達から慕われていたWさんという方がおられたそうです。

昨年の3月11日震災の日、Wさんは、まず会社の人達を避難させたのち、消防団の集合場所に向かったそうです。

しかし、その後、消息を絶たれ、今も尚、行方がわからないといいます。

Fさんは、絶望に喘ぎ、無念の思いを禁じ得ませんでした。

Wさんとの永年の付き合いの中で、30数年に渡り送られてきた宮古産の海の幸の品々 は、故郷を愛し誇りとしてきたWさんの気持ちが込められた贈り物ばかりで、そんなWさんの思いを伝え続ける為に何か出来ないだろうか?と考えられ、先程のプロジェクトを立ち上げられたのでした。

そのプロジェクトに共感を覚え、当社のお客様である社長も参画され宮古産の海の幸が私に送られてきたのでした。

そしてこのプロジェクトの仕組みがまた、味があります。

Fさんは、世の中の根っこを支えてくれている、正直な汗をかいて働く人々。そんな人々を元気づける正直なお金の使い方を考えてみたといいます。

例えば値札「1本100円の大根」を100円で買うと、売価100円原価70円粗利30円となり、粗利の内訳は、経常利益10円諸経費10円人件費(給与)10円になります。

もし、100円の大根を2割増の120円で買うとすると、売価120円原価70円粗利50円となり、粗利の内訳は経常利益10円諸経費10円人件費(給与)30円となり、働く人々の手取りが3倍になります。

この発想から、Wさんとの縁を繋いでくれた宮古のお店の品々を2割増で買わせてもらおう。

そうすれば、働く人々の手取りが3倍になり、働く人々が元気になりやる気になれば、お店の周りの人々も元気になる。

2割増が3倍に、3倍が10倍の効果を生み出すかもしれないと考えられました。

因みに、このFさんは大手のグループを率いておられる会長様です。

人を思う温かい想いと事業家ならではの発想による支援の形には私も共感を覚えます。

震災からの復興は1年や2年で終わるものではありません。

永年に渡る支援が必要です。

先程の様な支援の形であれば長きに渡る支援も可能になります。

その挨拶文の中に、昔、Fさんが子どもの頃、青果店を営んでいた実家のコロッケをつまみ食いをして、祖母から「今日の利益を全て食べた!!」と、こっぴどく怒られたというエピソードも書かれていました。

コロッケの販売は薄利の為、何個かつまみ食いをする事で儲けがなくなるということです。

Fさんは、こういった、幼い頃、気付いた利益の重要性を持って、今、大手グループを造りあげられ、今回の支援の方法を考えられたのです。

少し高く買わせてもらう事で、その利益を正直に働く人々へ還元してもらい、その輪を広げ、宮古の人達が元気になって頂く事を願っておられるわけです。

会社にとって利益の重要性はいうまでもない事だと思います。

しかし、「分かっている」「知っている」といっても実際の行動となると異なる事が多々あるものです。

ダンピングの商売や安易に利益率を落として販売するという行為等、日常の営業活動では当たり前の様に行われている傾向にあるのではないでしょうか?

この様な方々は、本質的な意味合いで利益の重要性や会社の在り方を理解していないということだろうと思います。

私もまた、社員達に多くの給与を持って帰ってもらうには、どうしたらよいか?とよく考えます。

その為には、やはり利益を如何に増加させることが出来るか?が最重要課題になってきます。

企業にとって利益とは血液の様なもので、潤沢に勢いよく流れているから、いつまでも病むことなく、企業の若さが保たれ、してあげたい事も出来る様になるわけです。

ダンピングの商売や利益を落として安易に販売をするという行為や考え方を続けていれば、結果として自分の首を絞める事になるのです。

企業においては、安易な販売をするのではなく、如何に事業に付加価値をつけ販売させて頂くのかを真剣に考えなくてならないのだということを、今回の挨拶文で再認識をさせられました。

私も早速このプロジェクトに参加させて頂きました。

僅かな思いの輪が広がり、それがやがて大きな力となって宮古の復興に繋がれば幸甚です。